海外の気道疾患治療(11)小児の気道狭窄の治療:先天性疾患その3


小児の声門部狭窄で非常に治療に難渋するものの一つに声門後部狭窄(Posterior glottic stenosis)がありますが、これは先天的に起こることはなく、未熟児に対する長期挿管や、先天性声門下狭窄などに対して長期間挿管されることによって、先天性病変に加えさらに病態が追加される形で起こることが多いです。

ちなみに、このような長期挿管後の声門後部狭窄を”両側声帯麻痺”と診断しているのを本邦では極めて多く見ますが、外科的な処置を一度も行われたことのない両側の先天性声帯麻痺は極めて稀で、外科的手術の既往がなく、全身性の神経疾患の存在しない、長期挿管後の症例のほとんどは声門後部狭窄を”両側声帯麻痺”と診断しており、これは全く異なる病変で治療も全く異なるため注意が必要です。

これに対して、先天的な声門部の狭窄として起こるものに時々見かけるものに先天性声門部癒合(Webと言います)があります。

これは胎児がまだお母さんの胎内にいる時の発生の過程の異常により本来開通するべき部分の不完全な形として結果であり、幾つかのグレードに分類されます。

上の図は声門部癒合の模式図です。本来は声帯が大きく開きそこから空気が通るはずですが、わずか2ミリ程度の小さな穴だけで呼吸をする状態となっています。

このような場合、出生してすぐに吸気性喘鳴を伴い呼吸困難に陥りますが、直径が2ミリあれば即死は免れるため早急な医療的処置が必要となります。

Webの部分が膜だけでできている場合は内視鏡的治療を行うこともありますが、膜だけでなく声門下に至るまで軟骨の閉鎖が続いていることもあり、そのような場合は外科的な治療が必要となります。どちらにしてもこのような病態では緊急気管切開で一旦呼吸を確保する必要があります。その後内視鏡を用いて正確な診断を行い治療を決定します。