海外の気道疾患治療(12)小児の気道狭窄の治療:先天性疾患その4

前回は声門部に起こり得る先天性疾患の説明をいたしましたが、今回はその下の声門下に起こる中で代表的な疾患である先天性声門下狭窄について説明いたします。

声門下、という言葉はその名の通り、声門(声帯)の下という意味であって、声を出すために必要な声帯を超えてすぐの部分を指します。これは位置の名前であるため正確にはどこまでを指すのか漠然としていますが、声門下というのは、左図でいう輪状軟骨に囲まれた部分と考えて差し支えありません。

気道というのは空気の通り道であり連続しているものですが、声帯、声門下、気管という三つの隣り合う器官は全く異なる構造を持ち、これが狭窄の治療を複雑なものにしています。

 

 

気管は、図に示すように断面を見ると気管軟骨輪と膜様部から成り立っています。この膜様部は筋肉で出来ており伸縮性があるため咳などをするときはこれが内腔を塞ぐような形で気道を狭くする一方、気管内挿管などにおいてはこの部分がある程度伸びるためにチューブのカフなどの圧力をやる過ごす働きを持っています。

 

 

 

これに対し声門下腔を形成する輪状軟骨は気道を包む形で全周が軟骨になっているため伸縮することによって圧力を軽減することが出来ません。このため太すぎるチューブや長期の経口挿管ののちに狭窄を起こす原因ともなります。このように声門下腔においては輪状軟骨が形作る内腔が不変であることが様々な問題を起こす原因となっています。

 

ちなみにいずれ後天的疾患の際に説明いたしますが、大体元気なんだけれども風邪をひくと喘鳴が出やすいとか、普段は元気だけど肺炎を起こしやすいという主訴で来院される小児をローザンヌ時代にはしばしば検査をする機会がありましたが、このような症状の患児に結構な割合で声門下嚢胞や声門下血管腫を診断したことがあり、やはりなんとなくスッキリしない臨床症状には理由があるものだと痛感したことがあります。

上記から予想がつくように、先天性声門下狭窄とはこの声門下腔を形成する輪状軟骨の先天的形状異常ということが出来ます。これは幾つかのパターンがありますが、必ずしも輪状軟骨が小さいとは限らず、むしろ多くはその形状の異常が問題となっています。これを理解できないと誤った術式を選択することとなり、治療が奏功しないだけでなくむしろ状況を悪化させることになります。

続く