指数の話 その1 倍々ゲーム

こんばんは、スタッフのUです。

前回の「マグニチュード」の投稿の中で、「自然現象の中には指数関数的な変化を見せるものがたくさんありますし、人間の感覚器での刺激の感じ方は対数関数的です」と書きましたが、今回はその話の続きです。

今日はまず指数関数の基本として指数の話から。

指数とは例えば「23(2の3乗)」の「3」のように、ある数を何度かけ合わせるかを示すものです。

具体的には、

21=2

22=4

23=8

24=16

というように指数の数が1増えるごとに、得られる値は2倍になっていきます。

ここで、この指数関数的な増え方の威力を示す話をご紹介します。

一つは、豊臣秀吉と、秀吉の御伽衆(おとぎしゅう)として仕えたといわれる曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)にまつわる逸話。

ある日、秀吉から褒美をもらえることになった新左衛門。秀吉から「なんでも欲しいものを言え」と促された新左衛門は「では1日目は米を1粒、2日目は2粒、3日目は4粒、4日目は8粒…というように1ヶ月間まいにち前の日の倍の米粒を与えてください」と答えました。

「なんと謙虚な。そんなことでいいのか。」

と秀吉は二つ返事で許可しますが、これが実はとんでもないことになるのです。

上の要領でいくと10日目は210-1=29=512(粒)、

14日目には214-1=213=8192(粒)。升1杯に入れたお米(1合)が生米でだいたい6700粒ぐらいですので、それを少し超えるぐらいです。

そして、20日目には220-1=219=524288(粒)(80合弱)。

10日目ぐらいならば大したことないように感じましたが、そろそろ嫌な予感がしてきますね。

23日目には223-1=222=4194304(粒)。これは米俵1.5俵(重さで約90kg分)ほどの量に相当します。

翌24日目にはその2倍の約3俵、25日目にはさらに倍の約6俵、26日目にはさらにその倍の12俵と倍々になっていき、30日目にはついに約200俵(5億3687万912粒、重さで約12トン!)近くのお米の量になるのです。これは石(こく)の単位で測れば(1石=1000合)、80石となります。秀吉が当初「謙虚」と思っていたのが、とんだ見込み違いだったことがわかります(逸話では、この要求がとんでもないものであることに途中で気付いた秀吉が、他の褒美に変えてくれと申し出た、ということになっていますが、これはあくまで創作の話のようです)。

「はじめは大した量じゃないと思ったが、なんと米200俵もの量の褒美になるのか!」

と思われた方、それはあくまで「30日目の量」であることにご注意ください。1日目から30日目までのすべての量を合計すると、400俵近い量になります。

ちなみにもしこの要領で50日目まで褒美をもらうことにすると、50日目には562兆9499億5342万1312粒で、重さにして1260万トン。令和6年の日本の主食用の米の生産量が700万トン弱なのでそれを遥かに超える量になります。

「厚さ0.1mmの紙を42回折ると月に届く」という話もありますが、これはまた次回に。

ひょっとするとここで新型コロナウイルスの際の感染爆発を思い浮かべた方々もいらっしゃるかもしれませんが、実際ウイルスの感染者数の増加も指数関数と無縁ではありません。医学が扱う諸現象にも数理的に記述できる要素が数多くあります。知識をアップデートし続けていくことももちろん大切ですが、数理的な知識もブラッシュアップし続けていきたいと常々思っています。