こんばんは、スタッフのUです。
先日、タイトルにある『ミルクの中のイワナ』という映画を観てきました。
『A TROUT IN THE MILK / ミルクの中のイワナ』公式サイト
研究者や漁業協同組合の組合員や釣り人などの証言を集め、イワナの生態や現状などを浮き彫りにしていくドキュメンタリーだったのですが、とても面白いものでした。
映画の中で色々興味深い話があったのですが(養殖業の稚魚放流をしてもイワナを増やすことには繋がらないという話や、環境DNA分析の話など)、その中でも特に面白かったのが、ハリガネムシが繋ぐエネルギー流の話でした。
イワナはかなり獰猛な肉食性の魚だそうで、口に入るサイズであればヘビやネズミなどを食べたりもするそうなのですが、バッタ目の陸生昆虫であるカマドウマを食べているケースが見られる、と。翅が無い陸生昆虫のカマドウマが、なぜ水の中で生きるイワナに食べられているのかについては、ながらく謎だったのですが、その謎を解く鍵が寄生虫のハリガネムシです。
流れは以下のようになっています。
寄生虫のハリガネムシが水中に卵を産む。
→孵化した幼生は、カゲロウなどの水生昆虫に食べられ、そこでシスト(厚い膜に包まれた休眠状態)となる。
→カゲロウは、シストを体内に抱えたまま羽化し、陸上に飛び立つ。
→陸上に出てきたカゲロウを、陸生昆虫のカマドウマが食べる。
→ハリガネムシのシストは、カマドウマの体内で休眠から目覚めて成長を遂げる。
→成虫になったハリガネムシは、宿主であるカマドウマを操り(!)水辺に誘導する。
→水辺に誘導されたカマドウマをイワナが食べる。
→そのイワナの体内から脱出したハリガネムシが、また水中に卵を産む。
→…(以下、くり返し)
…すごくないですか?
寄生者(ハリガネムシ類)が駆動する渓畔生態系のエネルギー流の解明(京都大学)
いくら科学が発達しても、自然は常に果てしない奥深さを見せ続けてくれますね。あ、これはもちろん科学が無力だと言いたいわけではありません。自然の雄大さに畏怖の念を抱くとともに、そこで私たちが学び続けられることはいくらでもあるという、ある意味とても清々しい感慨です。