小児の気道狭窄には大きく分けて二つのグループがあります。一つは先天性異常としての病変、つまり生まれつきの異常としての気道狭窄と、未熟児など長期経口挿管の影響によるなど後天的に発生した気道狭窄です。
特に小児の気道狭窄を特徴づけているのは先天性異常です。先天性異常の治療上の違いとなる大きな特徴は、その名のごとく生まれつき構造的解剖的な異常があるため、後天性の狭窄のような粘膜や軟骨の破壊や瘢痕化が存在せず、例えば構造物そのものが欠損していたり小さかったりあるいはないはずのものが存在する、ということが大きな問題となります。
先天性疾患によるものとしては、ダウン症やCHARGE症候群といった系統的異常を伴うもの、心血管奇形や食道奇形など複数の合併奇形を伴うもの、後鼻孔閉鎖や声門下狭窄、先天性気管狭窄(単独型)など単発の奇形などがありますが、それぞれの部位による先天性の異常を解説いたします。
(1)口腔・鼻腔の先天性異常
鼻腔の先天性異常として後鼻孔閉鎖という病態があります。これは鼻の後ろ側が生まれつき粘膜あるいは骨によって閉鎖しているため鼻と喉が繋がっていない状態です。通常は片方だけなので気がつきにくいですが、一方の鼻汁だけが続けて出てくることで検査して見つかります。治療としてはまずは内視鏡的に粘膜あるいは骨を貫通させますが、再閉鎖することが非常に多く、内視鏡による鼻中隔骨性部切除に至ることが多かったという印象があります。
口腔の先天異常として時々見かけることがあるのは、Pierre-Robin症候群など小顎症からの舌根沈下による機能性気道閉塞があります。これは主体は舌根沈下であるため、可及的に非侵襲的人工呼吸や気管切開で対処されていることが多いようですが、多くの場合は成長とともに改善します。これに加え、下顎骨前方移動などの口腔外科的処置も存在しますが、日本国内での実施状況は残念ながら存じ上げません。
(2)咽頭部の狭窄
先天異常とは言えませんが、咽頭における気道狭窄のなかで非常に多いのは、アデノイド増殖・扁桃肥大によるものです。いびきや睡眠時無呼吸などがひどい場合は手術によるアデノイド切除や扁桃摘出がしばしば行われます。
睡眠中の無呼吸などで、上記のような解剖学的な閉塞が見られないような場合、機能的閉塞を考え、全身麻酔下に自発呼吸を維持しながら経鼻ファイバー内視鏡にて咽頭喉頭を観察します。舌根沈下などは代表的な機能的気道狭窄ですが、神経疾患を持つ患児などには機能的咽頭虚脱を認めることが経験上多いと考えています。これはある程度は成長によって改善することもありますが、原病次第のところもあり、継続的な経過観察が必要となります。
次回は、喉頭の疾患に関して説明いたします。