海外の気道疾患治療(8)小児の気道狭窄の治療

前回までは、主に成人の気道狭窄について解説をしてきました。今回からしばらく小児の気道狭窄・気道疾患について解説をしていきたいと思います。

元々私が気道の治療を行うようになったのは、肺がんなどの治療のため気管支や気管分岐部などの再建手術に興味を持ち積極的にその手術を行っていたことがスタートとなっています。気管支や気管を吻合する技術は慣れれば安全に行えるものですが、やはり適切な修練と知識経験は不可欠です。このようなこともあり、スペインで成人の喉頭狭窄の手術の修練を行うに際して、気管の吻合に関しては必要な技術は習得していましたが、喉頭の機能的解剖的複雑さは素人に対応できるものではない、と痛感しました。

スペインから帰国し成人の気道狭窄の手術を行うようになりましたが、上記のようなこともあり必ず耳鼻咽喉科医と共同して治療にあたりました。しかしやはり本格的な喉頭の知識経験はさらなる治療、特に小児の治療には絶対不可欠だと考えるようになりました。このような経緯もあり、スペイン時代の上司の紹介でスイスのローザンヌの耳鼻咽喉科においてクリニカルフェローとして修練することとなりました。

スイス・ローザンヌでの修練は呼吸器外科でなく耳鼻咽喉科であったため、”耳鼻咽喉科としての気道疾患”という似て非なる角度からの修練となりました。いわば喉頭という構造物に対して下から徐々に上がっていった感覚から今度は鼻や咽頭から下に降りていく感覚で、口から肺までの気道という機能面から見た治療対象という発想に至り、飛躍的に気道疾患の理解を深めることとなりました。またここでお世話になったフィリップ・モニエ教授はこの二つの視点をつなげた人物として小児気道の治療の歴史に名を残す業績を残したと考えています。

成人の気道・喉頭狭窄がアメリカ、カナダ、フランスの胸部外科医を中心に1970年代から確立されていったこととは並行して、小児の気道狭窄の治療は1980年代ごろからアメリカのシンシナティ小児病院のコットンという医師によって発展していきました。

小児の気道狭窄は成人に比べて発生機序も発生部位もかなり異なるものが存在します。これに対してコットンによって開始された手術も成人とは異なる発想で行われていきました。次回からはこの点について解説をしていく予定です。

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